刑事裁判とは
刑事裁判は、検察官が処罰の必要があると考え裁判することを求めた事件について、被告人が有罪か無罪か、有罪であればどのような刑罰とするのがよいかを判断する手続です。
「民事裁判」と「刑事裁判」
裁判は、大きく分けると「民事裁判」と「刑事裁判」があります。
民事裁判は、一般の方たちの間で、お金の支払いを相手に求めたり、離婚や相続などでもめたりした場合に、裁判所に白黒つけてもらう裁判です。
これに対して、刑事裁判は、犯罪をした人に対して、本当にその人が犯罪をしたのかどうか、したとすればどのような刑罰を与えるのが適当かを判断するための裁判です。
刑事裁判を行うよう訴えを起こせるのは、国の機関である検察官に限られ、被害者の方であっても訴えを起こすことはできません。
問題となっている裁判が、民事事件を解決するための裁判なのか、犯罪を行ったことを罰するために行われるものなのかをまず確認しましょう。
刑事裁判の流れ
1 検察官による「起訴(公訴の提起)」
検察官は、事件の捜査をして、刑罰を与える必要があると判断した場合には、裁判所に対して裁判を行うよう求めます。
これを「起訴」または「公訴の提起」といいます。
起訴が行われることで、刑事裁判が行われることになります。
2 起訴されたあとの裁判の流れ
起訴があった場合、刑事裁判は通常以下のような流れで進みます。
起訴状の送達(そうたつ) | 検察官が起訴すると、裁判所から被告人に起訴状の写しが送られてきます。 | ||
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起訴状が送られてきてから約1か月後に開催。 争いのない事件であれば、1回の公判で終了 |
第一回公判 | 冒頭手続 | 人定質問 起訴状朗読 黙秘権告知 罪状認否 |
証拠調べ手続 | 検察官の冒頭陳述・証拠調べ請求 検察官の立証 被告人・弁護人の立証 |
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弁論手続 | 検察官の論告求刑 弁護人の最終弁論 被告人の意見陳述 |
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約10日後 | 第二回公判 | 判決 | 判決言い渡し |
裁判は毎日行われるわけではなく、審理の進行状況によって、数週間(場合によっては数カ月)ごとに行われます。
事実に争いがあるなど複雑な事件の場合は、公判の時間や回数が増え、判決までに長い時間がかかることがあります。
基本的に、被告人の方は毎回出席しなければなりません。
逮捕・勾留されている場合は留置場や拘置所から、逮捕されていない場合や保釈されている場合などは、自宅などから法廷に向かうことになります。
⑴ 冒頭手続
裁判の最初に、出廷している被告人が本人かどうかを確認するため、裁判官が、氏名などを尋ねます。
これを「人定質問(じんていしつもん)」といいます。
人違いでないことが確認できたら、検察官が、被告人が犯罪を行ったと考える事実を記載した起訴状を読み上げ、裁判官から黙秘権があることの説明があったのちに、事実に認めるか否認するかを答えます。
この一連の手続を、「冒頭手続(ぼうとうてつづき)」といいます。
この手続を行うことで、これからどのような事実について裁判を行うか、今回の裁判では何が争点になるのかが分かります。
⑵ 証拠調べ手続
冒頭手続が終わると、「証拠調べ手続」が始まります。
ある証拠を調べるには、一方が証拠とすることを裁判所に求め、もう一方の意見を聞いた上で、裁判所が証拠とすることに問題がないと判断されたものについて、その内容を調べます。
「書類」を調べるときは法廷で読み上げる方法、「証拠物」についてはその場にいる人たちに見てもらう方法、「証人」の場合には証人尋問を行う方法と、証拠の種類に応じたそれぞれの方法で証拠を調べます。
刑事事件では、検察官が事件について証明する責任を負っていますので、まずは検察官側の証拠から調べ、検察官の立証が終わった後、弁護側の証拠を調べます。
⑶ 被告人質問(ひこくにんしつもん)
裁判の中で、被告人本人に話をする機会が与えられます。
これを「被告人質問」といいます。
本人の話は極めて重要ですので、どのような裁判でも必ず行われます。
事実に争いのある事件では、この被告人質問で、裁判官に直接自分の言い分を説明することになります。
また、事実に争いがない場合でも、事件について謝罪や反省の気持ちを話す機会になります。
被告人質問は、裁判の中でとても大切な手続です。
⑷ 弁論手続
ア 「論告」
証拠調べが全て終わると、検察官は今回の事件についての意見を述べます。これを「論告(ろんこく)」といいます。
論告では、検察官の提出した証拠で事実が認められることと、どのような刑罰を与えるべきかについての意見を述べます。
どのような刑罰が適当かについての意見を述べた部分を「求刑(きゅうけい)」といいます。
イ 「弁論」
これに対して弁護人は、事実に争いがある場合は、検察官の主張は認められないことを説明し、争いのない事件であれば、被告人について有利な事実を述べて、できる限り被告人に軽い刑が言い渡されるよう意見を述べます。これを「弁論(べんろん)」といいます。
ウ 「最終陳述」
最後に、被告人にも意見を述べることができます。これを「最終陳述(さいしゅうちんじゅつ)」といいます。
この最終陳述で全ての審理が終わります。
これを「結審(けっしん)」といいます。
⑸ 判決言い渡し
結審すると、裁判官は証拠を検討し、判決を言い渡します。
判決の言い渡しでは、有罪か無罪か、有罪であった場合はどのような刑にするのかという結論である「主文」と、そのように判断した「理由」が述べられます。
判決の言い渡しがされることで裁判が終わります。
裁判の公開
刑事裁判は、公開の法廷で行われ、誰でも無料で、特に予約の必要もなく傍聴することができます。
ただし、有名な事件などで傍聴を希望する人が多い場合は、事前に抽選が行われ、当選した人でないと傍聴できない場合もあります。