勾留とは
勾留とは、被疑者や被告人の方たちが、逮捕に引続いて、一定の期間警察署の留置場や拘置所などに留め置かれることをいいます。
被疑者勾留と被告人勾留
勾留は、①逮捕に引き続いて行われる「被疑者勾留」と、②検察官が裁判をすると決めたあとに行われる「被告人勾留」と分けられます。
逮捕されてから、検察官が裁判をすると決めるまでの状態は「被疑者勾留」にあたります。
もっとも両者とも、一定期間警察署の留置場・拘置所で生活しなければならない状態であることに変わりはありません。
以下では、被疑者勾留について説明します。
勾留するための条件
勾留は無条件にできるわけではなく、法律で勾留できる場合が定められています。
1 勾留できる場合
法律では、以下の場合に勾留できると定めています。
① 生活するための住まいがない場合
② 証拠を隠滅するおそれがある場合
共犯がいる事件や、否認をしている事件では、他の共犯者と口裏合わせをしたり、被害者や事件に関係する人に対して、自分に有利な話をするよう働きかけたりするおそれがあるので、この条件が認められやすい傾向があります。
③ 逃げてしまう可能性がある場合
重大犯罪の場合、将来重い処分が下されるのを恐れて逃げてしまうことが考えられるため、この条件が認められやすい傾向があります。
2 勾留する必要性があること
勾留は、長期間にわたって留置場から出られなくなることから、多大な苦痛を伴いますし、会社への出勤ができなくなるなど大きな不都合を生じます。
したがって、先ほど述べた①~③の理由があるだけではなく、被疑者の方の生活を犠牲にしても、なお勾留する必要がある場合に限ってできるとされています。
勾留の手続
1 検察官による勾留の請求
最初に、逮捕された被疑者の方は、逮捕から48時間以内に検察庁に連れていかれます。
検察庁では、検察官が被疑者の方の言い分を聞きます(「弁解録取(べんかいろくしゅ)」といいます)。
検察官が、逃げたり証拠の隠滅をしたりするおそれがあるため、勾留する必要があると考えた場合には、裁判官に対して勾留するよう求めます。
2 裁判官による勾留の決定
検察官から勾留するよう求められた裁判官は、改めて被疑者の方から言い分を聞き(「勾留質問」といいます)、検察官の主張するとおり、勾留すべきと考えたときに、10日間警察署の留置場に留め置くとの決定をします(「勾留決定」といいます)。
裁判官が勾留を決めた場合、被疑者の方は、勾留されたことを家族などに連絡することを依頼できるので、その連絡先に勾留したことの通知が裁判所から送られることになります。
勾留される場所は原則として警察署の留置場になりますが、共犯者がいる場合や女性の場合には、捜査をしている警察署とは別の警察署に勾留されることになります。
検察官や裁判官のところには、同じ警察署に勾留されている人たちと一緒にバスに乗って朝出発し、夕方以降にまたバスに乗って一緒に帰ってきます。
検察官の弁解録取から裁判官が勾留を決定するまで、たいてい1日で全部行われますが、東京では1日目に検察官のところに行き、2日目に裁判官のところに行くことが多いので、丸2日間かかります。
勾留される期間
1 最初の勾留期間
検察官が勾留を請求した日から10日間です。裁判官が勾留を決定した日からではないので、注意が必要です。
10日間より短い期間を設定して勾留することはできませんので、勾留が決まったとの連絡があったら、まずは10日間留置場から出てくることができません。
2 勾留期間の延長
事件が複雑だったり、関係者の事情聴取がまだ終わっていないなど、やむを得ない理由で捜査を終えることができない場合は、10日間の勾留のあと、さらに最大10日間勾留の延長をすることができます。
「やむを得ない」とありますが、一般的には延長されることが多いため、ほとんどの事件では勾留を請求された日から20日間は留置場にいることになります。
勾留中の面会、差入れ等
勾留されている状態でも、面会や手紙のやり取りをしたり、物品を受け渡したりすることができます。
このように、品物を外部の人から被疑者の人に渡すことを「差入れ(さしいれ)」、被疑者の人から外部の人に品物を渡すことを「宅下げ(たくさげ)」といいます。
面会の方法や、どのような物をやりとりできるかは、各地域の警察ごとに異なりますので、被疑者の方が勾留されている警察署に問い合わせてください。
一般的には、現金の他、普段被疑者の方が着ている衣服や、書籍などを差し入れることが多いです。
接見禁止
裁判官は、被疑者の方が一般面会を認めると、証拠の隠滅などをすると疑われる場合には、一般面会や、手紙のやり取りを禁止することができます。
これを「接見等禁止処分(せっけんとうきんししょぶん)」といいます。
この処分が出されると、原則としてご家族であっても面会したり、手紙のやり取りをしたりすることができません。
共犯者がいる事件で、特に組織的な背景がうかがわれる事件、被疑者の方が否認をしている事件では、この接見禁止の処分が出されることが多いです(ただし、接見禁止の処分が出されている場合でも、少年事件では一般的に親権者である両親と、外国人の方の場合は、条約に基づき本国の大使館・領事館の職員の方と、それぞれ面会できます)。
仕事などの関係で、どうしてもご家族が面会しなければならない事情があり、ご家族が事件とかかわりがないのであれば、ご家族に限って接見禁止を解除するよう求めることができます。
そして、裁判官が解除を認めれば、ご家族は面会できるようになります。