捜査に対する防御方法
事件を起こしたのではないかと疑われたとき、警察署での取調べ、自宅などへの捜索や所有している物の差押さえ、ご自身への逮捕など、さまざまな捜査が行われます。
一般人の方が警察に対応するためにはどうしても法的な知識が必要になってきますし、心理的に大きなプレッシャーもかかってきます。
警察の捜査に対しては、自分ひとりで対応するより、弁護士に一緒に対応してもらった方が、より有効に対処できます。
犯人と疑われている状態であれば、誰でも弁護人を選ぶ権利があります。
これは、逮捕されているかいないかを問いません。
できるだけ早く弁護士に相談し、適切な対応をするようにすべきです。
取調べへの対応
捜査の中心は、取調べです。
取調べでは、参考人として事情を聞かれる場合と、犯人と疑われている「被疑者(ひぎしゃ)」という立場で取り調べられる場合があります。
取調べで自分が話した内容は証拠になりますので、慎重に対応することが必要です。
1 警察署・検察庁への出頭について
まだ逮捕されていない段階で警察や検察から「話を聞きたいから来てほしい」と言われた場合、できる限り弁護士に対応を事前に相談し、立ち会ってもらうようにしましょう。
ここで弁護士を付けないでむやみに出頭を拒否し続けていると、逃げるおそれがあるとして逆に逮捕されてしまう場合があります。
もし出頭について交渉する場合には、弁護士を付けてから交渉するようにしましょう。
取調べに行く前には、弁護士と打ち合わせを行い、事件についてどのように話をするか、事前に検討してから行くようにします。
もし逮捕されている状況であれば、何をどう話すかは接見で弁護士と相談することになります。
わからないことがあれば、勝手に自分で判断せず、接見で弁護士と相談してから話すようにしましょう。
2 黙秘権について
「自分が話したくないことは話さなくてもよい」という権利を「黙秘権」といいますが、これは憲法でも認められている権利です。
もし取り調べで警察から圧力を受けた場合でも、無理やりに話さなければならないということはありません。
実際に取調べにおいても、黙秘権を行使することは決して間違ったことではありません。
取調官から何か話せ!と迫られても、話すことを一切拒否することができます。
取調室での取調べは、不慣れで緊張する環境の中で受け答えをすることになりますので、聞かれたことにはすべて答えなくてはならないと考えがちです。
そうならないために、取調べを受ける際には、自分が黙秘権という憲法や法律で保障された権利を持っているということを、しっかりと認識しておく必要があります。
3 調書の作成に対する対応
取調べでは、聞いた話を取調官が作文し、最後に「この内容は私が話したことに間違いありません」とサインさせ、取調べを受けた人が自分で話した体裁の書面を作成します。
これを「供述調書」といいます。
この調書は、あくまでも取調官の作文であり、自分が話した内容がそのまま全て書かれるわけではありませんが、一旦サインをすると、自分が話したものとして証拠になってしまい、後で裁判で取り消すことはできなくなります。
そのため、調書に書名・押印するにあたっては、本当に自分がそのような内容を話したのか、慎重にチェックしなければなりません。
調書に誤りがあると考えた場合は、その場で訂正を求めます。
調書における誤りは、取調官に 遠慮することなく、何度でも納得いくまで訂正を申し出ましょう。
もし調書の内容が納得いかないものであったり、調書の訂正に応じてくれなかったりした場合には、サインを拒否しても問題ありません。
警察は「サインをしないと反省していないと思われるぞ」などと言ってきますが、そのようなことはありませんので、納得いかなければサインしないようにしましょう。
4 違法な取調べに対する対応
取り調べで、取調べをする警察官などに殴られたり脅されたりした場合には、すぐに弁護士に相談しましょう。
弁護士は、直ちに抗議するとともに、警察内部のルールに基づいて調査するよう申し入れます。
場合によっては被害届を提出することを検討します。
もし裁判になった場合には、そのときの取調べで作られた調書は、自分の意思で話したものではないとして、争っていくことになります。
その他の捜査活動に対する防御方法
1 職務質問や任意捜査に対する対応
⑴ 職務質問や、それに伴って任意の同行や所持品検査を求められた場合、一般の人が警察官に依頼されると断りにくく、怪しまれると思って応じてしまいがちです。
むやみに断って怪しまれることもありませんが、あくまでも職務質問は任意に行われるものですので、違法不当と感じた場合には断っても問題ありません。
もし職務質問で腕を掴まれて交番に連れて行かれたり、承諾もしていないのに無理やりかばんの中身をチェックされたりした場合は、違法な行為です。直ちに断り弁護士に相談しましょう。
⑵ 交通事故などを起こした場合に、現場の状況を調べて記録する活動を「実況見分」といいます。
この実況見分には、できるだけ弁護士と一緒に立ち会い、間違った記録がされないように確認するようにします。
⑶ その他、任意に捜査に協力してもらいたいと警察から依頼があった場合、できるだけ弁護士を窓口にして対応した方が有効です。
2 強制捜査に対する対応
裁判官の出した令状によって、逮捕されたり、自宅などへの捜索、所有しているものの差押をされたりすることが考えられます。
⑴ 逮捕された場合
逮捕された場合には、一刻も早く弁護士に来てもらうようにしましょう。
弁護士は、今後警察で行われる取調べに対してどのように対応すればよいかアドバイスをするとともに、一日でも早く警察署から出られるように活動します。
逮捕の後も引き続き警察署にいるよう裁判官から命じられる場合があります。
弁護士は、そのような決定をしないよう事前に交渉し、もし決定がされてしまったときは、違法不当であると異議を申し立てるなどの活動を行います。
⑵ 捜索・差押に対する対応
もし警察官が令状を持ってきた場合には、これを拒否することはできません。
ただし、警察官が捜索を許可されているのは、警察官が示した令状に書いてある場所に限られます。
それ以外の場所を捜索して、事件に関係ないものを持っていくことは許されていません。
したがって、もし令状を示された場合は、令状に何が書いてあるのかをきちんと確認し、警察官が令状に書いていない場所を捜索したり、持っていくことが許されていない物を持っていこうとしたりしたときには、ただちに抗議します。
もし間に合うようであれば、弁護士を呼んで立ち合ってもらい、違法な捜索や差押がなされないよう一緒にチェックしてもらうようにしましょう。