Q.被害者から告訴が提出されました。どうすれば告訴を取り消してもらうことができますか?
告訴は、被害者の方が、被害を受けたことを警察などに報告するとともに、「犯人を処罰してもらいたい」という意思を示すものです。したがって、被害者の方の気持ちを納めてもらう必要があります。
もし間違いなく自分が起こした事件で告訴されているのであれば、謝罪や賠償を尽くして示談としてもらい、告訴を取り消してもらうのが最も早い方法です。
Q.告訴が取り消されれば、逮捕はされませんか?
1 「親告罪」の事件の場合
犯罪の中には告訴がなければ起訴できない「親告罪」というものがあります。
告訴が取り消されれば、将来的に起訴ができなくなり、逮捕する必要もなくなりますので、逮捕を回避することができます。
2 「親告罪」ではない事件の場合
親告罪ではない事件では、告訴が取り消されたとしても必ず不起訴になるわけではありません。また、告訴が取り消されたら逮捕できないという規定もありません。したがって、告訴が取り消されたとしても必ず逮捕されないとは限りません。
しかし、親告罪でない犯罪の場合も、告訴が取り消されたということは、被害者の方がすでに刑事処罰を強く望んでいないことの現れといえます。被害者の方が処罰を望んでいないならば、ことさらに逮捕をして刑事事件として立件する必要が低くなったといえます。
したがって、親告罪ではない事件であっても、重大事件でなければ告訴の取り消しによって逮捕を回避できる可能性があります。
Q.告訴が取り消されれば、前科は付きませんか?
1 親告罪の場合
告訴がなければ起訴できない犯罪(親告罪)では、検察官が起訴する前に告訴が取り消されると裁判が開かれることはありませんので、前科が付くことはなくなります。
2 親告罪ではない場合
親告罪でない事件の場合には、告訴の取り消しがあっても起訴はできます。
しかし、被害者の人が処罰を望んでいないことが明らかになりますので、事件が重大ではなければ、起訴されずに済み、前科が付かなくなる可能性が高くなります。
Q.告訴はいつまでに取り消してもらう必要がありますか?
法律上、告訴は検察官が起訴する前まで取り消すことができると定められています。したがって、検察官が起訴をする前までに取り消してもらう必要があります。
検察官が起訴したあとには、もう告訴を取り消すことができません。被害者の方が起訴のあった後に「告訴を取り消す」と言ったとしても、検察官の起訴が取り消されて裁判が中止されることはなく、そのまま判決が言い渡されます。
Q.被害者が未成年の場合、告訴を取り消してもらうことはできますか?
告訴を取り消すことができるのは、その告訴をした本人です。そして、未成年であっても告訴は可能ですし、その取り消しをすることもできます。
しかし、告訴をしているのが被害者の親だった場合には注意が必要です。
被害者が未成年の場合、両親も被害者本人とは別に告訴することができます。両親たちが告訴をしているときは、被害者本人であっても両親による告訴を取り消すことはできません。このときは、両親に取り消しをしてもらう必要があります。
Q.告訴を取り消してもらう場合の注意点があれば教えてください。
告訴を取り消してもらう場合には、「告訴取消書」を作成して警察などに提出するか、被害者の方が警察署などに行って「告訴を取り消します」という内容の調書を作ってもらうのが一般的です。
1 被害者に注意していただくこと
告訴は、いったん取り消した場合には、犯人が起訴されなくなる上、被害者の方が再び同じ事件で告訴することもできなくなります。検察官は、告訴の取り消しがされた場合、本当に告訴を取り消すつもりがあるのかどうか、告訴をした本人に確認します。
したがって、告訴の取り消しをしてもらう時には、もう起訴されなくなること、そして、再び告訴をすることはできなくなることをきちんと理解してもらったうえで、告訴取消書にサインをもらうことが必要です。
2 被害者が未成年だった場合
告訴の取り消しは、原則として告訴をした本人がすることになります。
被害者が未成年の場合には、示談は被害者の両親とすることになりますが、告訴の取り消しは被害者本人にしてもらわなければなりません。したがって、示談書には両親がサインした場合でも、告訴取消書には被害者本人の署名をもらわなければなりません(念のため、両親が本人を装って署名していないか、筆跡等を比較して確認しておくとよいでしょう)。
また、両親なども独立して告訴をしていることがあります。この場合、被害者ご本人が告訴を取り消しても、両親の告訴は取り消されたことにはなりません。したがって、両親にも告訴を取り消してもらう必要があります。
3 代理人に取り消してもらう場合
告訴の取り消しは、被害者本人から取り消しを任された代理人もすることもできます。
この場合は、被害者本人が、代理人に告訴の取り消しを委任する旨が書いてある「委任状(いにんじょう)」をもらっておく必要があります。